IPS e.maxシステム
第一大臼歯での咬合力は成人男性で平均60kgと言われています。
大臼歯におけるオールセラミック補綴においては、1000Mpaを超える曲げ強度を持つジルコニアをベースにした
ジルコニア・セラミックでも、表層のセラミック強度は100Mpa前後のために、よほどのサポート形態を付与しない限り、
強度的に安心できるものではありません。
e.maxプレスによるステイン仕上げ、e.maxCADによるステイン仕上げのみ、
補綴物全体が360~400Mpaの強度を持ち、大臼歯部補綴に安心して使用できるといわれています。
all ceramic all you need |
e.max プレス |
e.max ジルプレス
|
e.max キャド |
e.max ジルキャド |
インレー |
〇 | × | × | × |
4/5冠 |
〇 | × | × | × |
ラミネート・べニア |
〇 | × | × | × |
クラウン |
〇 | 〇 | 〇 | × |
2本連結冠 |
× | 〇 | 〇 | × |
3本ブリッジ |
〇 | 〇 | 〇 | × |
2本連結~6本連結 |
× | 〇 | × | 〇 |
フレーム材として |
〇 | △ | 〇 | ◎ |
築盛セラミック |
e.max セラム |
e.max セラム | e.max セラム |
e.max セラム |
曲げ強度 |
400 Mpa | 110 Mpa | 360 Mpa | 900 Mpa |
|
2ケイ酸 リチウムセラミック |
フルオロアパタイト ガラスセラミック |
2ケイ酸 リチウムセラミック |
|
|
ロストワックスして プレスオン
|
ジルコニアフレームに ロストワックスして プレスオン
|
CAD/CAM |
CAD/CAMで フレームとして製作し ジルプレスやセラム |
IPS e.max プレス
e.maxプレスは905~925度に加熱したセラミック・インゴットをプレス形成します。
プレス形成されたセラミックの曲げ強度は400Mpaの強度を持ち、
口腔内において充分な強度を有します。
必要に応じて、e.maxセラムを部分的に築盛したり、ステインで色づけします。
e.maxプレスは4種類のインゴットから成ります。
HT LT MO HO
HT(ハイトランス-高透明)
HTインゴットは単独でインレーに適しています。
適度な透明感があり、セラミックが薄くなるマージン付近の透明感は歯牙の色調を拾い、修復物を感じさせません。
HT
クリアランスはで0.6mm以上
曲げ強度 400Mpa
【雑感】
実際に作ってみると400Mpaoの硬さを実感します。
400Mpaという硬さのため、インレーなどの小さな補綴物の場合は形態修正や咬合調整などが困難です。
特に理由がない場合は、インレーにおいては『Empress Esthetic』をおすすめします。
LTはラミネートべニアに適していると↓で書いていますが、ラミネートべニアでも「築盛」を必要としないケースは、HTインゴットによるステイン仕上げが良いと思います。
LT(ロートランス-低透明)
LTインゴットはアンレーやラミネートべニアに適しています。
切端や咬頭のみe.maxセラムでレイアリングし、指状構造の再現や透明感のコントロールをします。(ハーフ・レイアリング)
切端の透明感や臼歯の咬頭の色調表現にこだわらなければ、ステインによる色調表現のみの選択も可能です。
LT
曲げ強度 黄色のLT部分 400Mpa
水色のセラム部分 100Mpa
【雑感】
ステインのみで仕上げようとした場合、色調がA3より濃いケースは一段下のシェードから色づけした方が無難です。エンジェルクラウンやe.maxなど、イボクラが供給するA3より濃いインゴットはA3より濃く暗く感じます。
MOインゴット(ミディアムオパシティ-中不透明)
MOインゴットはレイアリングするフレームとして使用します。
MOインゴットでサポートフレームを製作し、その上にe.maxセラムを築盛します。
有髄歯やファイバーコアで色調再現優先の使用が適しています。
可能な限りサポート形態を付与します。
MO
曲げ強度 黄色のMO部分 400Mpa
水色のセラム部分 100Mpa
HOインゴット(ハイオパシティ-高不透明)
HOインゴットはメタルフレームの支台歯に使用するフレーム材です。
HOインゴットでサポート形態を製作し、その上にe.maxセラムを築盛します。
可能な限りサポート形態を付与します。
HO
曲げ強度 黄色のMO部分 400Mpa
水色のセラム部分 100Mpa
プレスで製作する利点
CAD/CAMでは及ばない適合精度が得られます。
クラウンやブリッジなどの外側性はもちろん
インレーや4/5冠、ラミネートなどの内側性の補綴物も製作できます。
咬合挙上などの咬合面接着として、離開したコンタクト部の形態補正なども得意とします。
プレスで製作する欠点
プレス温度などの条件によっては、物性に多少の差が生まれる可能性があります。
製作においては、本数や厚みによる温度設定や
支台歯の傾きなどによるスプルーイングの経験が必要になります。
インプラントなどで支台の傾斜が著しい場合、プレスでの製作は出来ないことがあります。
第一小臼歯までのブリッジは製作可能ですが、2本の連結冠が製作できません。
IPS e.max キャド
青紫色のブロックは2ケイ酸リチウムセラミックのクリスタライゼーション途中です。
それをCAD/CAMで削り出し、必要な調整を施してクリスタライゼーションをします。
クリスタライゼーションをしたIPS e.maxキャドの曲げ強度は360Mpaです。
前歯、及び臼歯のクラウンのみ製作可能で、現在はセレック・インラボやエベレスト・システムでCAD/CAMします。
今後はノーベル・バイオケアのプロセラシステムに加わる予定です。
プレス同様、必要に応じてe.maxセラムを部分的にレイアリングしたり、ステインで色づけします。
クリスタライゼーション前に色づけしたり(クリスタルシェード)、グレーズスプレーを使用した場合は、
クリスタライゼーショ後にIPS e.max セラムやセラムシェードは使用できません。
e.maxキャドは、3種類のインゴットから成ります。
HT LT MO
⇒⇒
CAD/CAM 調整 クリスタライゼーション
特徴付け
LTインゴット(ロートランス)
低透明度のインゴットでCAD/CAMにより削り出されます。
最終的な形態修正を施しステインで仕上げることも出来、また切端、咬頭などにe.maxセラムを築盛することも出来ます。
MOインゴット(ミディアムオパシティ)
MOインゴットは中不透明度で、レイアリングするフレーム材として使用します。MOインゴットでサポートフレームを製作し、その上にe.maxセラムを築盛します。
キャドで製作する利点
安定した適合が得られます。
工業製品の安定した物性がそのまま生かされます。
キャドで製作する欠点
プレスで製作するほどの適合精度は得られません。
プレスの400Mpaの曲げ強度に比べ、360Mpaの曲げ強度になります。
IPS e.max ジルプレス
IPS e.maxジルプレスは、IPS e.maxジルキャドなどの「酸化ジルコニア」で製作したフレームに圧入するセラミックです。
『ジルプレス』は『プレス』とは違います。
プレス =2ケイ酸リチウムセラミック (400Mpa)
ジルプレス=フルオロアパタイトガラスセラミック (110Mpa)
ジルコニア・フレームとジルプレスはジルライナーでつなげられ、
その上にe.maxセラムを築盛することも可能です。
ジルコニアフレームにIPS e.maxプレスを接着する技法もありますが、
その場合は完成後に修正のための焼成が出来ません。
(コンタクト盛り足し、咬合面盛り足しなど)
他社の酸化ジルコニアフレームでe.max ジルプレスを圧入できるのは
熱膨張係数=CTE10.5~11.0の範囲に限る。 各社ジルコニア熱膨張係数はこちら
IPS e.max ジルキャド
IPS e.maxジルキャドは酸化ジルコニウムで出来ていて、クラウン・ブリッジ
のフレーム材として、またインプラントの上部構造のフレーム材として適して
います。
そのフレームの上に、e.maxジルプレスを圧入しても良いですし、
e.maxセラムの築盛も可能です。